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たんぱく質で風邪予防

駅伝のコーチングで一番神経を使うのが「風邪」だ。
とりわけ、重要な練習が終わり、心身ともに疲労抜きに入る、試合の2週間
くらい前が一番危ない。

 

一般的に、運動をすると身体が強くなると信じられているが、必ずしもそうでは
ない。アスリートのように、毎日身体を鍛えている場合、運動後の筋疲労を速や
かに回復させなければ逆に免疫力が落ちてしまうからだ。

 

私たちの筋肉中にある遊離アミノ酸の約60%を占めているのが、非必須アミノ酸
であるグルタミン。グルタミンは、肉や魚、牛乳や卵など我々が日常的に食べて
いる食品に含まれている。20種類あるといわれているアミノ酸のなかで、なぜ
グルタミンの量だけがこんなに多いのかというと、グルタミンが体内のエネルギー
代謝に重要な役割を果たしているからだ。

 

通常、エネルギー源といえばごはんやパンなどに含まれる炭水化物が主体だと
思われがちだが、グルタミンは生体の維持に重要な「免疫細胞」や
「消化管粘膜の細胞」において直接的なエネルギー源として使われている。
また、長時間運動やけが、病気などで身体に高い負荷がかかる非常事態では、
エネルギー源(グルコース)の原料として全身に供給される機能性アミノ酸
なのだ。

 

順天堂大の箱根駅伝チームを対象に行った実験では、45k走を行った後の血中
グルタミン濃度は、ゴール後に昼食を食べているにもかかわらず、2時間以上も
減少し続けた。実際に、フルマラソンを走ったランナーの約50%が、レース後に
風邪をひいてしまった、というイギリスの研究もある。

 

このように、グルタミンが枯渇している状態が続くと、免疫力が低下し、風邪
などへの感染のリスクが高まるというわけだ。つまり、アスリートは筋肉中の
グルタミンが満タンの状態でトレーニングを開始し、トレーニング後には速やか
に補給しなければならない。

 

最近では感情や心持ちも免疫力に関係があることがわかっている。例えば、
適度な緊張感や笑いは免疫力を高め、過度なストレスや悲しみは免疫力を低下
させてしまう。これは、交感神経と副交感神経のバランスが影響していると
いわれている。何事も「ちょうどよい案配」が大切だということだろう。

 

アスリートはもちろん、この冬マラソンに挑戦する人や、今が勝負の受験生も、
タンパク質をしっかり摂って、風邪を予防してほしい。

 

 

コラム「ママは監督」2014年1月7日 毎日新聞 夕刊掲載分

2014-01-07
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