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女性コーチを増やそう

近代オリンピックが始まった19世紀末、女性にはまだスポーツが普及しておらず、
1896年の第1回アテネ大会に女性の参加はなかった。近代オリンピックの創始者、
ピエール・ド・クーベルタン男爵は、「『より速く、より高く、より強く』の
理念の下では、女性は男性にはかなわない。オリンピックは騎士的な競技である」
との考えで、女性のスポーツ参加が遅れたといわれている。

 

しかし、いまや女性アスリートの参加や活躍は当たり前の時代。2012年のロンドン
大会に参加したアスリートの比率は、男性が55.7%、女性が44.3%とほぼ同率に
なっている。日本においては、男性137人、女性156人と女性の方が多かった。

 

一方で、コーチの数は男性が164人に対し女性は30人と、いまだに女性は男性を
大きく下回っている。日本の女性コーチが一向に増えないのはなぜか。

 

日本オリンピック委員会の女性スポーツ専門部会がロンドン大会に出場した
女性アスリートを対象に行った調査では、女性アスリートの80%以上が引退後
にもスポーツに関わりたいと回答している。具体的には、41.3%が「指導者に
なりたい」と答え、4.8%の「子供に教えたい」をあわせると、約半数がコーチを
希望している。

 

つまり、女性がコーチを希望しているにもかかわらず、日本には受け皿がないのだ。
女性の結婚や出産による一時的な空白を考えると、男性コーチを雇用した方が
都合がいいからだろう。そのため、女性はコーチの経験も積みづらい。
カナダでは、コーチを目指す女性に「見習い制度」を導入し、積極的に女性を
指導現場に登用しながら、コーチの育成に取り組んでいる。

 

先日行われた全国都道府県対抗女子駅伝では、47チーム中、女性監督はわずか6人
しかいなかった。優勝した京都の監督は女性。さらに京都は3人のコーチング
スタッフも全員女性で構成されており、その3人ともが過去にこの駅伝で区間賞を
獲得した経験を持っていたのだ。

 

女性アスリートにとって、同性コーチの選手時代の成功経験は何よりも心に響く。
女性コーチだからできるコーチングは、女性アスリートの更なる能力を引き出す
可能性を秘めている。

 

間もなく始まるソチ冬季オリンピック。日本はスキー・ジャンプやスピード
スケートなどで女性コーチが手腕を振るう。女性アスリートだけでなく、
女性コーチの活躍にも期待したい。

 

 

コラム「ママは監督」2014年1月21日 毎日新聞 夕刊掲載分

2014-01-21
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