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「遊び」こそスポーツの基本

体育の日(10月の第2月曜日で今年は14日)といえば毎年、「子供の体力」が
話題になる。文部科学省は子供の体力低下の原因として外遊びやスポーツ活動
に不可欠な時間、空間(遊び場)、仲間という三つの間の減少を挙げている。

 

福岡で生まれ育った私が小さいころは「体育の日」に町内会の運動会が開催さ
れていた。1丁目から7丁目までがいくつかのチームになって戦う形式。
小学生が多く住む団地がある3丁目チームが優勝し、私の住んでいた5丁目チーム
は高齢者が多かったからか決まって最下位だった。
そんなチーム編成の違いはさておき、この運動会で最も盛り上がるのは、最終
プログラムの「町内対校リレー」。各年代(確か小学校1年生から50代まで)の
男女どちらか1人ずつでチームが編成され、年齢が若い人から順にバトンをつなぐ。
リレーの選手になることはステイタスであり、運動会の何週間か前におこなわれる
「リレー選手選考会」に向けて、大人も子供も小学校の校庭で走る練習をしていた
ものだ。地域のイベントがきっかけになり、スポーツの時間、空間、そして仲間が
確保されていた。

 

しかし、大きなイベントがなくても、運動能力を高めることはできる。
先日、体を動かす幅広い能力を高める「コーディネーショントレーニング」が、
東京都内の全公立校約2400校の体育の授業に一斉に導入されるというニュース
があった。このコーディネーショントレーニングは、私たちが小さい頃からしている
「遊び」そのものであり、時間、空間、仲間がなくても、親子が家庭で簡単に取り
組むことが可能である。

 

例えば、私の4歳の息子は毎晩肩たたきをしてくれるのだが、初めはトントン、
しばらくするとモミモミ。私が「右手はトントン、左手はモミモミにしてみて」と
言うと、いとも簡単にやってのける。「次は左手モミモミ、右手トントン」と言うと、
素早く手を入れ替えて上手にできる。これがまさにコーディネーショントレーニング
なのだ。

庭にかかしを書いて片足で跳びはねるケンケンパ、お母さんと「アルプス一万尺」
などを歌いながらしていた手遊び、右足と左足を非対称に動かすゴム跳びなどは、
かなり高度なコーディネーショントレーニングだったわけだ。

 

大人と子供が一緒になって、真剣に「遊び」を楽しむことこそが、今も昔も変わらない、
体力向上の基本かもしれない。

 

 

コラム「ママは監督」2013年10月15日 毎日新聞 夕刊掲載分

2013-10-15
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