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子供がいても練習できる

私は子供を女子駅伝チームの合宿に連れて行く。
2歳まではベビーシッターに来てもらったが、3歳からはママと2人だ。
朝練習では早起きして、みんなと一緒に食事をした後は、学生たちに遊んでもらう。
その代わり、メイン練習では学生達の応援団になる。

 

子供が生まれるまでは、子供は練習に連れて行ってはいけないものだと思っていた。
当然、合宿に連れて行くなどみじんも考えていなかった。しかし、保育園のない
土日祝日の練習には、夫がいなければ子供を連れて行かざるを得ない。
コーチや学生マネージャーに子供の相手をしてもらいながら、学生たちの指導をして
いるうちに「これなら合宿にも連れて行けるかもしれない」と考えるようになった。
一番の心配は、子供のことではなく学生たちのことだ。
合宿という、寝食を共にしながら集中して練習をする場に、子供がいてはムードが
悪くなるのではないか、とても悩んだ。そこで、子供が帯同した時とそうでない時の
学生達のムードを調査してみた。

 

その結果、学生たちは子供の帯同による変化はみられず、むしろ子供が帯同した時の
方が「元気-活動性」が高まり、「疲労」がやや低下する傾向がみられた。
通常、合宿の後半では学生たちは心身ともに疲労が蓄積し口数が減ってくるが、
子供が帯同した時は練習後や食事後に子供と話したり、遊んだりして、ちょうど
良い息抜きになったのかも知れない。

コーチの私は「緊張-不安」大きく低下し、「元気-活動性」が非常に高まった。
これは、長期間家を空けることによる、夫や周囲に対する罪悪感がなくなった
ことに起因する。また、練習中はベビーシッターが子供の世話してくれていた
ことで、コーチ業に集中できたことも、精神的な安定につながった。

 

海外では、アスリートやコーチが子どもを練習や試合に連れて行くことは
珍しくない。日本では子育て期の選手やコーチが少ないということもあるが、
スポーツ活動以外の時間にも規制や団体行動が強いられるスポーツ現場において、
子供は「練習の邪魔になる」「気が散る」存在にみられるからではないだろうか。

 

しかし、オンとオフの区切りがないスポーツ現場には弊害もある。
反動からくるストレスは必ずしも競技能力を高めるとはいえない。
この実験データは、子育て中の女性アスリートや女性コーチにとって、
有益であると信じている。

 

 

コラム「ママは監督」2013年9月3日 毎日新聞 夕刊掲載分

 

2013-09-03
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